「Jホラーの影響、100%受けてる!」マイケル・シャンクス監督がオンライン登壇!

12/19(金)実施 トーク付き試写会イベントレポート

恋愛の深層心理をリアルに追求し、あらゆる観客を「キモイけど笑える」「イタイのに目が離せない」と唯一無二の映画体験に引きずり込む〈共依存ボディ・ホラー〉を手がけたのは、NEONが本作で異例の大型契約を結び、すでにA24製作の次回作が決定している若き才能、オーストラリア出身の新人監督マイケル・シャンクス。12月19日(金)に都内で最速試写会が開催され、上映後には観客のざわめきと高揚感が会場に残るなか、マイケル・シャンクス監督がオンラインで登場。トークショーとQ&Aが実施され、本作への想いや作品に散りばめられた様々な意図が明かされた。

倦怠期に差し掛かるカップルの壮絶な運命をたどる『トゥギャザー』。上映後、オーストラリアの自宅から参加したマイケル・シャンクス監督の姿がスクリーンに映し出されると、映画を見終わったばかりの観客席から大きな拍手が沸き起こる。シャンクス監督は満面の笑みで「日本のみなさんこんにちは! 今日はありがとうございます。この映画が私の大好きな国、日本で公開されることになり本当に嬉しいです。何回か訪れたこともありますし、日本映画も大好きなので皆さんに映画をご紹介できることをとても光栄に思っています」と嬉しそうに挨拶した。

本作で長編映画デビューを果たしたシャンクス監督。映画の成り立ちについて話が及ぶと、物語のアイディアは自身とパートナー、そして周囲の関係性の影響から生まれたと明かす。「私とパートナーとは高校卒業後から実に17年目の付き合いになりますが、常に一緒に生活し、交友関係も一緒で長年変化がない状態を過ごしてきました。私たちと近しい友人たちも高校時代からの恋人と交際を続けている人が多いのですが、ある友人カップルが破局したとき、片方とは交流が続きますが、片方とは会えなくなってしまいました。それを見て『彼らは自分の一部を剝ぎ取られるような感覚なんだろうな』と想像して、少し恐ろしく感じ、それが本作の起源となったんです」と身近な体験から着想を得たと話す。

Q&Aの時間になると、上映直後にもかかわらず作品への鋭い感想や考察を交えた質問が相次ぎ、会場は本作への高い熱量に満ちあふれた。「映画を見て日本のホラー映画を思い起こさせる演出がいくつかあったように感じました。Jホラーからの影響は受けていますか?」という質問には、「イエス!100パーセントJホラーの影響受けていますよ(笑)。アメリカ版の『ザ・リング』が怖くて気になって見たオリジナル版の『リング』が私が初めて見たJホラーですが、そこからハマって『呪怨』シリーズなどいろいろ見ました。ほかの監督の名前を挙げるとするならば、やはり黒沢清監督は外せないですね。ミリーがすりガラスに顔を寄せるシーンは『回路』をオマージュしています。西洋の監督でいうとM・ナイト・シャマラン、ジョン・カーペンター、キューブリックも大好き。あとは三池崇史監督の作品も大好きで、『オーディション』なんかとんでもない作品ですよね!」と影響を受けた作品について熱く語った。

また映画では音楽も非常に重要な役割を果たし印象を残していることから、「 スパイスガールズの楽曲や、予告で使用されているザ・タートルズの『HAPPY TOGETHER』など、音楽が物語の鍵になっていましたが、脚本の段階から決めていたのでしょうか? 」という質問には、「『HAPPY TOGETHER』に関しては、映画の宣伝の段階で制作会社のNEONが使うことを決めたのですが、スパイスガールズは脚本の段階から決めこんでいました。脚本にも『ティムがこう言う、ミリーがこう言う、そしてスパイスガールズがこう言う』というように、登場人物のひとりとしてびっしり書き込んでいたんですが、その時点では権利は取得していなかったんです。映画は低予算だったので、音楽の権利金に割ける予算はまったくと言っていいほどなかった。でもどうしても使いたくて悩んでいたら、主演のデイヴ・フランコとアリソン・ブリーがそのためのお金を出してくれたんです。それでようやく権利取得に向けて動き出しました。楽曲を使用するシーンの撮影日の前夜に正式な使用許可が下りて心底ほっとしました。でももし許可が下りなかったとしても撮影は続行しようとしていたんです(笑)。おそらくスパイスガールズたちが大急ぎでサインしてくれたんでしょうね」と笑った。

そんな楽曲の権利金まで提供してくれたデイヴとアリソンは主人公カップルを演じながら、プロデューサーにも名を連ね、長編映画は初となるシャンクス監督の制作をサポートしてくれたという。「私は17歳からミュージッビデオを作っていますが、長編映画を作るのはこれが初めてだったんです。資金を集めるのは大変ですし、ほかにも困難なことはいろいろありましたが、デイヴとアリソンが支えてくれました。デイヴは私が書いた別の作品の脚本を読んでいた繋がりがあって、本作にも興味を持ってくれました。そして彼から実生活でのパートナーであるアリソンへ話がいき、映画への参加が決まりました。彼らは二人とも俳優として活躍する傍ら、脚本、監督、プロデュースなど多方面で経験があり、彼らが私の作品を守り抜いてくれました。制作会社や出資者たちと話をつけてくれる頼もしい存在で心から感謝しています。そして撮影の時は、あうんの呼吸でスムーズに撮影が進み、また終始楽しく笑いながら、エネルギー満点に撮影を進めることができました」と振り返る。

近年、『サブスタンス』や『チタン』などボディ・ホラーが再び注目を集めていることについて質問が及ぶと、「私がなぜボディ・ホラーに惹かれるのかというと、“自分の内面を救う物語”だからだと思います。例えばスラッシャーものなどは外に敵がいるので、襲ってくるジェイソンやモンスターから逃げることができますが、ボディ・ホラーは自分の体内の問題だから、逃げられないという怖さがあります。私は心配性な性格なのでちょっと体調が悪くなるとすぐに『大変だ、病気になったかも』と大騒ぎしてしまいますが、誰でも大きな病気になったり、ウイルスが体内に入ってきたりすることに恐怖心があると思います。我々には体と奇妙な関係があって、自分が体の変容を求めることもあれば、体に裏切られることもある。私たちは自分の体とどう付き合っていったらいいのかというのは永遠の問題です。ですので私は、ボディ・ホラーはトレンドではなく、世の根底にあるものだと思っています」と自身の解釈を明かした。さらに、「ちなみに『サブスタンス』は本作の編集中に映画館で見ました。『お金かけていていいなぁ』と少し嫉妬しました(笑)。ホラーのなかでもサブジャンルだったボディ・ホラーがスタイリッシュなイメージとともにマス層にも響くようになったのは嬉しいことですし、本作もホラーファンをはじめ多くの方々に広く見てもらえたらと思っています」と『サブスタンス』に次ぐ人気ボディ・ホラー作品になってほしいと願望を語った。

さらに、監督のZOOM背景に映り込んでいた不気味なマスクについての質問が飛び出すと、シャンクス監督は席を立ち、その用途や由来について身振り手振りを交えながら力説。さらには興奮した様子で部屋を飛び出し、劇中終盤にも登場する“あるもの”のフィギュアを持ち出して解説する一幕もあった。作品への並々ならぬ愛情と熱量、そして監督のお茶目な一面が垣間見えるやり取りに観客は大いに沸き、会場は終始笑いに包まれていた。

映画『トゥギャザー』公式サイト